ACTIVITY REPORT

イギリス, Hull University Teaching Hospitalsへの留学を終えて

留学・研修

初めまして。附属病院の谷口勝城です。

このたび、JSGE-UEG Fellowship Exchange 2026に採択していただき、イギリス東部のHull(ハル)にあるHull University Teaching Hospitals NHS Trustへ4週間の短期留学を経験させていただきましたので、ご報告させていただきます。

<JSGE-UEG Fellowship Exchangeについて>

JSGE-UEG Fellowship Exchangeは、日本消化器病学会(JSGE)と欧州消化器病学会(UEG)の連携による若手医師向けの短期研修プログラムで、40歳以下の若手医師が欧州の施設で研修する機会を提供するものです。

今回は日本から2名が採択され、そのうちの一人として選出していただきました。2026年8月3日から8月28日までの4週間、Hull University Teaching Hospitals NHS Trustで研修する機会をいただきました。

<留学先について>

Hullはイギリス東部に位置する人口25~30万人ほどの地方都市です。ロンドンからは電車で約3時間の距離にあります。

Hull Minster
写真)Hull Minster
Humber Bridge
写真)Humber Bridge

今回の研修先であるHull University Teaching Hospitalsでは、炎症性腸疾患(IBD)の診療・研究で国際的に活躍されているProf. Shaji Sebastian先生にご指導いただきました。Sebastian教授は、欧州のIBD領域を代表する学会であるEuropean Crohn’s and Colitis Organisation(ECCO)の活動にも携わるほか、英国消化器病学会(BSG)でも研究領域の活動を担われています。

Hull Royal Infirmary
写真)Hull Royal Infirmary
Castle Hill Hospital
写真)Castle Hill Hospital

<IBD診療>

イギリスの医療制度はNational Health Service、通称NHSと呼ばれ、主に税金によって運営されています。原則として医療サービスを自己負担なく受けられる一方、日本とは異なる特徴を持っています。日本では症状に応じて患者さん自身が専門医療機関を受診することもできますが、NHSでは原則としてまずGP(General Practitioner:総合診療医)の診療を受け、必要に応じて専門性の高い病院へ紹介されます。

Hull University Teaching Hospitalsでは外来、病棟、内視鏡検査など、さまざまな場面でIBD診療を見学させていただきました。日本とは異なる医療制度のもとで、限られた医療資源を多職種で活用しながら診療を行っていることが印象的でした。日本とは異なる点が多く、例えば、安定した患者さんについては専門医療機関への受診間隔が6~9ヶ月ごとと長く設定されており、GPやIBD nurseなど多職種がそれぞれの役割を担いながら長期的な診療を支えていました。

一方で、日本の医療体制の良さを改めて感じる場面もありました。専門医へのアクセスや検査を受けるまでの流れなど、日本では比較的スムーズに行えることが、英国では医療制度上の制約を受ける場合があります。実際に現地の診療を経験することで、日本の医療が当たり前ではないこと、そしてそれぞれの医療制度に長所と課題があることを実感しました。

MDT(他職種カンファ)後に。医師(消化器, 放射線, 病理医), 看護師, 栄養士が参加していました。
写真)MDT(他職種カンファ)後に。医師(消化器, 放射線, 病理医), 看護師, 栄養士が参加していました。

<研究体制の違い>

今回の研修では、臨床面だけでなく研究面でも多くの刺激を受けました。

Hullでは、日常の臨床で生じた疑問を研究課題へと発展させ、それを臨床研究や多施設共同研究につなげていく環境が整っており、臨床と研究の距離の近さを実感しました。

また、同年代のResearch Fellowが世界各国から集まっており、研究に対する高いモチベーションと積極的な姿勢が非常に印象的でした。多くの患者さんが何らかの臨床研究に参加しており、日常診療の中に研究が自然に組み込まれていることにも驚きました。

左からProf. Sebastian, Research fellowのAsir, Hashem, 筆者
写真)左からProf. Sebastian, Research fellowのAsir, Hashem, 筆者

滞在中にはSebastian教授と研究についてディスカッションする機会も多くいただき、その中で新たなSystematic reviewにも取り組むよう勧めていただきました。イギリス滞在中から研究を開始し、帰国後の現在も定期的なミーティングを続けています。今後、成果として報告できるよう精進していきたいと考えております。さらに、滞在中には今後の国際共同研究についても具体的に話し合う機会があり、こちらについても現在、各所に相談しながら研究開始に向けて準備を進めています。

今回の留学を通じて、単に海外の研究環境を見学するだけでなく、現地の研究者と直接議論することで新たな研究テーマが生まれ、それが帰国後の研究活動へとつながっていくという、国際交流の大きな可能性を実感することができました。

<おわりに>

海外での研修というと、少しハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、今回私自身が実際に経験してみて、まず一歩踏み出してみることの大切さを実感しました。

今回のFellowship Exchangeをはじめ、若手医師が海外で学ぶ機会は少しずつ広がっています。今回の研修では、IBD診療・研究をより良いものにしていこうという共通の志を持つ先生方と出会い、今後につながる貴重な交流を築くことができました。それは今回の留学における大きな収穫の一つだったと思います。

これから海外での研修や研究を考えている若手の先生方には、ぜひ積極的に世界へ羽ばたいていただきたいと思います。そして私自身も、今回得たつながりを大切にしながら、今後の診療・研究を通じて国際的な交流をさらに深めていきたいと思います。

Prof.と一緒にPremier leagueのHull City AFCの試合観戦。
写真)Prof.と一緒にPremier leagueのHull City AFCの試合観戦。